「初めて見たフットボール ● パールボウル観戦ノート」

編集部では「観戦の強化書」に引き続き、エンジョイフットボールシリーズの様々な新企画を予定しています。
今回は鈴木菜穂子さん(横浜市在住・会社員)の「初めて見たフットボール」です。
 私とってフットボールとの最初の出会いは大学時代。

 その頃、親しくしていた友人がフットボールファンで、その人の家でたまたまフットボールの衛星放送を一緒に見たことが、初めての出会いだと記憶しています。

 フットボールは日本ではそんなにポピュラーなスポーツとはいえないので、私に限らず周囲でも話題にあまりのぼりません。かといって、決して面白くないスポーツのわけがないのに。
 残念なことに、野球やサッカーの供給に負けてしまってるだけなんじゃないかなと、そう思っていました。

 と。言うことで。今回、私にとっては初めてのフットボールの生観戦になったのでした。

 東京ドームには、何回か野球観戦で来たことがあるのですけれど。それ以外のスポーツ観戦で入るのは初めての体験。野球で見慣れているはずの会場がなんだか違った雰囲気です。

 平日だったからでしょうか。入場口には学生服を着た人や、ネクタイをつけたサラリーマンが目立ちます。
 野球観戦と同じような人の層なのですが、どことなく違うと思ったら、メガホンを持っている人がいないのです。メガホンというアイテムの存在感の大きさにちょっと驚きつつ、フットボールの話です。


入場口には学生さんや会社帰りの人が目立つ
 まずはキックオフの前に、チアリーダーさん達の様子に目がいきました。

 うーん。女の私から見てもチアリーダーさん達は可愛いです。しかもかっこいい!フットボール選手が力強くかっこいいのに対して、チアリーダーさんは可愛くってかっこいいのです。コレって最強の組み合わせですよね。

 にわかチアリーダーになってみたくもなりましたが、彼女たちが足をぺたっと開いているのを見たときに、体の硬い私は、あっさりと断念することにしました。

 子供の頃からきちんと体操しておけばよかったと思ったりして…。


鹿島ディアーズのチアリーダーさん達

オンワードスカイラークスと観客の声援
 それにしても、試合前から観客をまとめるのがうまくって、その様子が楽しそう!

 また驚いたことに、このいろいろな応援は、チアリーダーさんの判断で勝手にしているのではなくって、そのチアリーダーさん達に「次はこの応援をしますよ」と指示する人がいたことです。


縁の下の力持ち
 確かにパンフレットを見てみると、フットボールは選手だけではなくって、応援の花形チアリーダーさん。チームの監督はもちろん、医療を担当する人。選手のマネージャーさん。チアリーダーのマネージャーさん…と、大勢の人によって構成されていることに気がつきます。

 目に触れないところで大勢の人がこの競技を支えて、チームを維持しているのだな…と、結束力に感動!楽しそうにしている人たちに感動して、同時にその場を共有していることが嬉しかったです。

 また今回は、オンワードスカイラークスのチアリーダーさんのところに、幼稚園児くらいの小さい子供が何人もチアリーダーさんの格好をしてあつまっているのが目を引きました。
 このプチリーダーちゃん(勝手に命名…)達は、ドームの入り口で見かけて以来、ついつい目が行ってしまう集団でした。

 チアリーダーのお姉さんに「今日は決勝だから、選手のお兄さんのいるとこで大きな声で話しちゃだめよー」と言われて、素直に「はーい」と返事しているのが微笑ましかったりして。
 「でも“がんばってー”って言うと喜ぶからね」って言われると、プチ君達が声援をおくる。それを見た選手の皆さんが「おっしゃー!」と、ガッツポーズしたりして。

 あんな姿を見て、男の子はフットボールってかっこいいな。やってみたいな。って思うのでしょうし、女の子はチアリーダーをやりたい!って夢みるのでしょう。
 未来のチアリーダーとフットボールプレイヤーを見た気がしました。


未来のチアリーダーくん達

試合前の緊張感のある控え室横の廊下
 会場の雰囲気をざっと見てみます。

 入り口のところで感じた様に客層は幅広いです。小さなお子様を連れたご家族連れらしき集団から、学校帰りの学生さん。この学生さんの集団はなかなか多かったです。ビデオを持ってきて録画している人もいました。

 そして、ネクタイを締めたサラリーマンと、スーツ姿のOLらしき人。決勝出場チームの会社の方でしょうか?仕事を終えて、ビール片手に自分のところの仲間が頑張ってるスポーツを観戦するって、すごくいい雰囲気ですよね。

 その中でも私がいいなぁ…と思ったのは、年配のおじさま方の集団です。
 チームの熱心なファンなのでしょうか。若い頃に選手をやっておられたのでしょうか。誰よりも熱く声援を送っている姿がなんともステキでした。

 こんな風に年齢層も幅広く、みんなで熱くなれるスポーツ観戦は、日頃のストレス発散にもなりますよね。皆さんとても楽しそうに、そして熱く観戦していらっしゃいました。

 さて。他のスポーツで私が比較的明るいのは、野球、サッカー、バスケットボール、テニス…と。
 一応一通りは、自分でもしたり、見たりしてきてはいるのですが、フットボールをこれほどしっかりと見たことはなかったので、試合とは別に気になったことがありました。

 まずは試合開始前のコイントスと、反則があった時の黄色いハンカチをなげる動作です。
 これだけ激しいスポーツながら、なんて紳士的なルールなんだろう…と思いました。アメリカが発祥の地とのことですが(なんてったって“アメリカン”フットボールですものね…)、イギリスあたりから、そのルーツきていそうな考え方だと思って興味深くみてしまいました。

 もう一つ、目を引いたのは、10ヤードのポールを持っている審判さん(あとで訊いたのですが、チェーンクルーっていうんですね)。
 試合中に幾度か、この審判さんのところまで選手が突っ込んでくるシーンがありました。その度に、審判さんの逃げ足の速さといったら!もう!最高!
 ポールをうまく倒して、身体だけはささーっと逃げてしまうんです。あの勢いで選手に身体をぶつけられたら、大怪我するかも…。確かにそんな感じです。

 同じようにカメラマンの方々も、みな揃って逃げるのがうまいんですよ。


写真を撮りつつ逃げる時は逃げる
 なるほど。
 フットボールの審判さんやカメラマンさんになる為には、ゲームとプレーをよく見極めて(予想して)逃げるのがうまくなければならないのですね。
 妙に納得してしまいました。
 さて試合ですが。
 実は私。今回なにがなにやら判らないまま来てしまいました。会社を出る時、上司に「どのチームの試合を見に行くんだー?」と聞かれて、「うーん…」と答えにつまってしまったありさまでした。
 そうして会場に着いたら、なんと決勝戦だったのであります。(ただしこの時点でもなんの決勝戦だかはわかってない)

 でもゲームの内容は、素人の私が言えることは少ないのですけれど、とても面白かったです。
 前述のように、ほとんどのお客さんはフットボールを見に来た人々ですから、ナニかあると「おおー!」というどよめきや、「ああー!」というため息が聞こえます。
 時には私には判らない暗号や呪文が、大声で飛び交います。
 英語なのでしょうけれど、私は宇宙語で話す人々の中に放り込まれた気持ちになっておりました。

 「これはいかん。なにが起こっているのか波に乗らないと!」焦った私はすぐさま訊きます。
 「今のナニ!?何が起こったの!?なんで攻撃終っちゃったのー?」。
 素人丸出しですが、外国に行って一人だけ言葉がしゃべれず、コミュニケーションがとれないこと程悲しいことはありません。それでも、そうこうしているうちに、第3クォーターの頃には大体わかるようになってきました。

 「あ。いまパスが成功した。10ヤードとったー!」。
 よかった。一安心です。波に乗れています。

 幸い試合のルールは、一緒に行った方に逐一尋ねることができました。最初は説明を聞いても半分くらいしか理解できなかったのですが、最後の方になると、いま何が起こっているのかぐらいは判るようになってきました。
 「あーあ。いまの攻撃はちょっと…」と、声に出さないまでも(まだ完全にはわかってナイですしね)いっぱしの評論家の誕生です。

 やっぱり初めてのスポーツは、詳しい人と一緒に行った方がいいですね!

 それに、はっきりいってテレビで見るのとでは全然違います。ライブが一番!迫力はもちろんですが、その場の雰囲気の中にいるということ自体が違います。

 そんな新しい刺激を受けつつ、今年はフットボール観戦にちょっと通ってみよう、と思った日になりました。