「大物喰い」−日産プリンス東京ほどこの言葉が似合うチームは他に見当たらない。
97年。Xリーグ復帰1年目にして、前年度王者のリクルートを破ったと思えば、翌98年にはリーグ最終戦で、それまで全勝のシルバースターを下し、ファイナル6に進出して周囲を驚かせた。
そして2000年。またしても日産プリンス東京は、Xリーグの強豪相手に大きな1勝を奪い取ることに成功した。その相手がリーグトップレベルの選手層を誇る鹿島ということであれば「大物喰い」と呼ぶのは、もはや失礼なのかもしれない。
しかもライン戦で真っ向勝負を挑んでの勝利ということであれば、なおのことであろう。
『真っ向勝負』。日産プリンス東京は、あのDL木村や谷嶋らトップレベルのフロントが揃う鹿島ディフェンス相手に、堂々のライン戦を挑んだのだ。
その意図は第2Q、鹿島が自陣39ヤードからのオフェンスを、QB鈴木からWR志田へのパスで先制したあとの、日産プリンス東京のオフェンスシリーズで見て取れた。
日産プリンス東京は、この自陣30ヤードからのシリーズをQB岡本のキーププレーや、RB関野のダイブなど8プレーで敵陣1ヤードまで迫り、最後はQB岡本がゴールに捻じ込んでTD。まさに力ずくで奪い取った今季初TDだった。TFPキックは失敗したものの、日産プリンス東京が鹿島に突きつけた挑戦状としては上出来だった。
さらに日産プリンス東京は、第2Q残り5分を切ったところで得た自陣26ヤードからのオフェンスをRB勇、関野のダイブなどでリズム良くボールを進め、最後はQB岡本の鮮やかな18ヤードオプションキープで追加のTDを奪い、13−7とリードしてして前半を折り返すことに成功する。
一方の鹿島。日産プリンス東京のブリッツを多用した積極果敢なディフェンスにラインが翻弄され、思うようにQB鈴木にパスを投じさせることが出来ないでいた。
加えてこの日のQB鈴木は、短いレンジのパスが浮き気味で安定感を欠いている。それでは、とばかりにRB堀口、池場らにボールを託すが、日産プリンス東京の粘り強いディフェンス陣の前に追加点を奪えぬまま、失速していく。
後半に入り、失ったリズムを取り戻そうと鹿島はQB笹野を投入。QB笹野は自慢の快速を生かし、左右にロールアウトしながらパスを放るが正確さに欠け、最後は日産プリンス東京DB小川にインターセプトを食らってしまう。
逆に日産プリンス東京は、第4Qに入って自陣16ヤードからのオフェンスを、RB関野の切れ味鋭いダイブを中心に12プレーを費やして、3本目のTDを奪うことに成功。2ポイントコンバージョンも成功して、21−7とする。
TD2本の差がついたこの時点で、鹿島の焦りは『不安な予感』へと変化していく。その変化は7−21とされたあとのシリーズで浮き彫りとなる。
鹿島自陣34ヤードからのオフェンスは、それまでと違い“頼みの綱”RB堀口一辺倒。それでも4回のキャリーで敵陣29ヤードまでボールを運ぶRB堀口は、さすがというより他ないが、結局このシリーズもTDパスを投げ急いだQB鈴木が、再び日産プリンス東京DB小川にインターセプトを喫してしまう。
残り時間が5分近くあったにも関わらず、このインターセプトは鹿島の負けを、東京ドームにいる観衆に予感させるに十分であった。
なぜならそれほどまでに、日産プリンス東京のボールコントロールには安定感があったからだ。256ヤードというラン獲得ヤードがそれを物語る。
結局、鹿島は残り2分34秒にTE板井のTDで追いすがるものの、そのあとのオンサイドキックを日産プリンス東京に押さえられ、万事休す。
結局21−14のスコアで、日産プリンス東京が熱戦を制して1勝1敗。優勝戦線に踏みとどまった。
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