日本一奪回に燃えるリクルートクラブシーガルズと前節で鹿島を倒して勢いに乗る日産プリンス東京スカイライナーズとのXリーグCENTRAL注目の一戦は、10月14日、神奈川県の等々力硬式野球場で行われた。
試合は、攻守ともにゲームプランどおりの展開となって、終始主導権を握ったリクルートが34−0と完封勝利をあげ、ファイナル6出場に王手をかけた。
リクルートは先発QBに2年目の井上を起用して周囲を驚かせた。大橋ヘッドコーチ曰く「ウチは調子をいい奴を出すというのが方針。このところパスの成功率では松本よりも井上の方がよかった」。ただ、この日の井上は11回の試投でわずか3回のパス成功(59ヤードゲイン)という成績に終わった。
それでも「レシーバーは相手との1対1の戦いに勝ち、ブリッツに対してはすれ違いを利用して、3回の攻撃のうち一回でもいいからロングゲインを狙う」(大橋HC)というゲームプランはあたった。
積極果敢にブリッツを仕掛けてくる日産プリンス東京のLB陣に対し、リクルートRB古谷は、巧みにあいたエリアをついて距離を稼いだ。5回のゲインで99ヤードを走り、ビッグプレーで試合の流れを一気にリクルートに持ち込んだ。
日産プリンス東京は、QB岡本とFB関野のランを中心にボールコントロールフットボールを展開した。この二人の合計で130ヤードをゲイン、獲得ヤードではリクルートを上回った。タイムオブポゼッションでも正味48分間のうち、34分24秒を支配するという徹底ぶりだった。
それでもリクルートのディフェンスは、レッドゾーンへの進出を3回許しながらも、日産プリンス東京がスコアボードに得点を刻むことを許さなかった。
これには、4度あった4thダウンショート、ギャンブルの場面をいずれも凌いだのが大きい。大橋HCによれば、これまでマンツーマンしか使っていなかったディフェンスのカバーに、ゾーンを折り込んだそうだ。予想のできないディフェンスを使うことによって、QB岡本の判断を迷わせ、オプションのリードを少しでも遅らせようとするのが狙いだった。
大橋HC自身、この作戦がどの程度功を奏したかはビデオを見ないと判断できないとしているが、日産プリンス東京戦用に、夏から準備していたというその周到さが試合を有利に運んだという見方はできる。
試合は、リクルートがRB米田とRB古谷のラッシュでリズムを作り、第1Q7分3秒にRB古谷が7ヤードランで先制TD。第2QにもRB米田がゴール前まで押し込むと、最後はQB井上が1ヤードを自ら持ち込んでTD。14−0とリードを広げる。
ターニングポイントとなったのはこの直後のシリーズだ。日産プリンス東京は、自陣36ヤード付近からQB岡本のキープ、RB関野、長谷川のラン、WR大橋へのパスなど11プレーで、ゴール前17ヤードまで陣地を進めてFGトライ。
このキックをリクルートがブロックし得点を与えず、その直後のリクルート1stダウン10のオフェンスでRB古谷が、相手ディフェンスを快足で抜き去り75ヤード独走のTD。21−0で前半を折り返した。
両者膠着状態となった第3Qを終え、第4Q開始早々。リクルートの快足レシーバー堀井が93ヤードのパントリターンTDを決めた。「あれぐらいはやればいつでも出来る人ですから」と大橋HC。ボールをキャッチしたあと一度は右にリターンを試みるが、走路が塞がれていたために体を反転させて左サイドにコースを変え、そのままタックルを数回はずして一気にエンドゾーンへと走りこんだ。
試合終了間際には、控えQB高橋からWR脇田への30ヤードTDパスが決まってダメを押した。
これで3戦全勝となったリクルートは、残る東京三菱銀行戦(10月21日・西武ドーム)、もしくは鹿島戦(11月6日・東京ドーム)のいずれかに勝てば3年連続のプレーオフ進出が決まる。
一方の日産プリンス東京は1勝2敗となり、2年ぶりのファイナル6出場に向けてあとがなくなった。
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