XリーグWEST最終日の第2試合は、前節で既にディビジョン優勝を決めた松下電工インパルスと、この日の第1試合でイワタニの入替戦出場が決定して、精神的に俄然余裕の出た井内盛栄堂ブラックイーグルスの対戦。
ある意味で歴史に残る結果であった。20世紀最後のマッチアップで、今年は創部30周年の節目を迎える“関西クラブチームの伝統”とも云うべき古豪・ブラックイーグルスが、はたまた西日本実業団チームの草分け的存在の強豪・松下電工インパルスに、21年ぶりの秋季リーグ戦勝利。もちろんXリーグとなってからは初の勝利を納めた。(1977年から79年までは関西社会人リーグでブラックイーグルスが3連勝)
1987年に創設された「西日本カンファレンス1部」での敗戦(松下電工 21−7 ブラックイーグルス)以来、ブラックイーグルスの松下電工秋季リーグ対戦戦績は、ブラックイーグルスが12連敗。
「一時期は得点することすら出来なくて“格下”と云われ続けてきた」(義政監督)。まさに屈辱の歴史といっても過言ではない。
試合終了を告げる勝利のニーダウン。時計が「0」を示した瞬間に、フィールドになだれこむブラックイーグルス戦士達。喜びが爆発する。まるで優勝したかのように監督の胴上げが始まった。
「すみません。優勝したわけでもないのに...」。すまなそうに集まった記者団の前に現れる義政監督。この人柄だ。この人が一時はスポンサーを失い、空中分解寸前にあったチームをまとめ上げて、ここまで率いてきた。「この勝利は来季につながります」と目を細める。
唯一の得点となった41ヤードFGを決めたRB/K朴。昨年は仕事とフットボールの両立に悩み、一時はチームを離れた。しかし「ブラックイーグルスが好きだから。走るのが好きだから」(朴)と、このチームに戻ってきた。
「もう一度やらせて欲しい」。そんな朴をチームメイトは温かく迎え入れた。「みんなと一緒にやれるところまでやろう、と吹っ切れました」。40ヤード以上のFGキックは初めての成功という。
「恥ずかしい試合をして失礼しました。監督責任です」と松下電工の村上監督。記者からの『今日のゲームプランでしたか?』との質問に黙って目線を落とす。
ディビジョン優勝を決めている松下電工に迷いはなかった。来るべきファイナル6での死闘に備え、オフェンスの主力である、QB高橋(公)、RB安藤、樫野らを温存し、QB高橋(幸)に全てを託した。
「ウチはゴリ(QB#7高橋)が怪我をするとどうなるか。全員が理解できたと思います」。
それでも、ディフェンス陣の健闘は光った。春からスターター確実といわれてきた新人QB中林(桃大)が怪我から復帰し、最終戦で初めて今季最高の状態で挑む井内盛栄堂を、ほとんど自陣に侵攻させることなく耐え凌いだ。
しかし、松下電工オフェンスも敵陣に攻め入ったのは僅かに2回。しかも最後のキャッチアップオフェンスを、ゴール前20ヤードまで進めながら、4thダウンギャンブル失敗で終わらせるという最悪の結果となった。
「“どちらの高橋”が出てもオフェンスが出来ないとファイナル6ではとても歯が立たない」。松下電工は、リーグ最終戦で『苦い良薬』を自ら選んだ。
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