檻から放たれたライオンが鋭い牙をむいた−そんな印象の残るゲーム。
オンワードとすかいらーくの合併で春季から話題を独占してきたオンワードスカイラークス(ON−SKY)。一方、東京三菱銀行と東京海上の合併で、やはり今季新たなスタートを切ったLIONS。合併チーム同士の対戦が9月17日東京ドームで行われた。
見る者を驚かせたのがLIONSディフェンス陣の圧倒的な破壊力。「9割はブリッツ」(LIONS大村ヘッドコーチ)という、4−3体型から時には7人でラッシュをかける積極果敢なブリッツディフェンスを見せ、ON−SKYオフェンスに襲いかかった。
ON−SKY注目の先発QBは富澤。しかしそのQB富澤は、LIONSのブリッツの前に再三QBサックを食らい、第1Q中盤に負傷。交替出場のQB小島(崇)も思うようにプレーさせてもらえず、結局、第1Qは1回のダウン更新のみでパントに終始した。
一方のLIONSもQB木目田のオプションキープなどで奮闘するものの、ダウン更新には至らない。しかし、最初にチャンスを掴んだのはそのLIONSだった。
ターンオーバーでディフェンス陣が作り出した自陣42ヤードからのオフェンス。QB木目田のオプションキープやRB西澤のパワープレーでゴール前15ヤードまでボールを進めると、最後はやはりRB西澤がスルリと走り抜けてTD。7−0と先制に成功する。
勢いに乗るLIONSはなんとか追加点を奪いたいところだが、次の攻撃シリーズ自陣17ヤードからのオフェンスで、RB中西がボールを痛恨のファンブル。攻撃権をON−SKYに奪われてしまう。
この絶好のチャンスにON−SKYは、QB小島(崇)がフリーになったWR神にきっちりとパスを通してTD。TFPも決まり、7−7のタイスコアーで前半を折り返す。
後半に入ってから、今度はLIONSのオフェンス陣が奮闘する。
自陣31ヤードからのオフェンス。再三迎えた3rd、4thダウンコンバージョンをことごとくものにして、ボールをコントロール。実に15プレー、7分間以上を費やし、ゴール前11ヤードまでボールを進め、FGのチャンスを迎える。
しかしK横山が蹴ったボールが、わずかにゴールの右に逸れて失敗。これ以降、LIONSは失速。結局、ダウンの更新もままならず、試合終了を迎えてしまう。
一方ON−SKYは、第4Qに入り敵陣30ヤードからという絶好のチャンスを得る。QB小島(崇)はLIONSのブリッツからなんとか逃げながら、RB小島(康)にパスを決めダウンを更新。続いて、マンツーマンカバーを振りきったWR浦がパスをもぎ取りTD。
これが決勝点となり、注目された合併チーム同士の対決は、14−7でON−SKYがLIONSを振りきった。
それにしてもLIONSの健闘ばかりが光る試合だった。
特にディフェンス陣はDL西村、辰巳、三谷などが、スピードとパワーでスクリメージラインを支配するかと思えば、LB川井、稲月、吉野らが出足の鋭いブリッツで、相手オフェンスラインを翻弄した。DBに目を向ければ、CB小林圭らがON−SKYの豊富なWR陣を相手にピッタリとマンツーマンカバーをする。
「勝ちにいった」とLIONSの若き知将・大村ヘッドコーチが悔しそうに語るだけあって、2つのチームは見事に統合されていた。実力、というよりも、ほんの僅かな差が決め手となった試合だっただけに、今後もLIONSはファイナル6出場争いに絡んできそうだ。
一方、ON−SKYの野田監督は「ウチがどうこうというよりLIONSが強かった、ということです。初戦でこういう試合をモノに出来てよかった」と、さすがに胸をなで下ろした。
注目されたON−SKYのDLジョージ・ヘザー、WRブラッド・ブレナン、元横綱・若乃花の花田選手だが、WRブレッド・ブレナンは負傷のためこの試合は欠場。DLジョージ・ヘザーは第1Q中盤から途中出場、QBサックを豪快に決めて会場を沸かせた。
花田選手は、LIONS先制TD後のTFPの場面でDLとしてXリーグ公式戦に初出場。「チームが懸命に戦っているのを見て、個人では出来ないモノが判りました。もっと経験と練習を積んで1回でも多く出場出来るように頑張りたい」と初めて経験するフットボールの実戦フィールドで、第1歩を踏み出した。
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