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解説記事

立命館大学パンサーズ VS シーガルズ
チーム名 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
立命館大学パンサーズ 3 7 3 23 36
シーガルズ 0 13 0 0 13

GREAT!PANTHERS!
立命館大学が創部初の栄冠に輝く
 春に芽生えた苗が、夏の暑さを乗り越えて成長を遂げ、実りの秋を迎える。そして正月三箇日の最終日は、1年の“収穫”を確かめるアメリカンフットボール日本選手権の日。
 4年ぶり3度目の全国制覇に燃えるシーガルズと、3度目の挑戦で初の栄冠を目指す立命館大学パンサーズ。奇しくも4年前と同じ対戦となった第56回ライスボウルが1月3日、東京ドームにて行なわれた。

 学生界無敵の立命館大オフェンスと、社会人最強のシーガルズディフェンスのどちらに軍配があがるのか、25000人の観衆はここに注目したにちがいない。
 しかし、この日の主役は紛れもなく立命館大のディフェンス陣であった。
立命・WR木下 (C)M.Sato  第1Q、最初にチャンスを掴んだのは立命館大。先発QBにはミルズ杯(年間最優秀選手賞)受賞のエースQB高田が戦列復帰してきた。
 シーガルズのパントスナップミスで、敵陣23ヤードからの攻撃権を得た立命館大は、ピッチを受けたWR木下が、QB高田へ再びパスを投じるトリックプレーでゴール前まで前進。TDにこそならなかったが、K岸野が22ヤードFGを決めて3点を先制した。

 シーガルズオフェンスもQB高橋がWR脇田、RB米田へのパスを通して反撃体制を整えるが、ファンブルで攻撃権を失ってしまう。
 さらに次のシリーズではエースQB高橋が負傷退場。悪いことが重なるがQB岩本が好リリーフし、ディフェンスも立命館大オフェンスの看板であるRB磯谷、野本らのランプレーをシャットアウトして、徐々にペースを掴みはじめる。

 第2Qになると試合は大きく動き始める。
 まず3分過ぎ、ゴール前1ヤードからQB岩本がWR堀江にプレーアクションパスを決めてTD。7−3と逆転する。
 今シーズン初めて追う展開になった立命館大もすかさず反撃。QB高田からのクイックパスを受けたWR木下が持ち前のスピードでグングン加速し65ヤードを一気に駆け抜け、10−7と逆転する。

 だが、失点を許してもすぐさま得点してモメンタムを奪い返すのが、今シーズンのシーガルズ。QB岩本が9ヤードをスクランブルで走りTD(TFP失敗)。13−10と再逆転する。

 このままシーガルズ3点リードで前半を終了。
 自慢のオフェンスが封じ込まれながらも、ビッグプレーと堅守で食らいついて反撃のチャンスを覗う立命館大。対するシーガルズは、モメンタムを引き寄せるチャンスを幾度となく掴むものの、ファンブル、インターセプトなどミスが多く、出入りが激しい。
 対象的な両チームが後半、意外な形で明暗を分けることになる。
立命・WR冷水 (C)M.Sato  第3Qになってもシーガルズオフェンスはターンオーバー多発でピリッとしない。
 オフェンスが奪われたターンオーバーをディフェンスの奮闘でリカバリーし、何とかFGのみの3失点に食い止め、試合は3Q終了時点で13−13のタイスコア。

 一方の立命館大もエースWR冷水へのパスが通り始めるが、ショットガンからのオプションプレーを封じ込まれて、なかなか効果的なゲインを生み出せない。
 しかしハーフタイムに「我慢だ。しぶとくやっていけば必ず勝機があるから我慢しよう」(立命・古橋ヘッド)とハッパをかけ、選手が集中力を維持して我慢のフットボールに徹したことが、第4Qに実を結ぶ。

 3Q終了間際から、RB白木のビックゲインなどでゴール前まで詰め寄ったシーガルズ。第4Q最初のプレーでK喜田が34ヤードのFGを狙うが失敗、勝ち越しのチャンスを逃してしまう。
 このピンチのあとにチャンスあり。直後の立命館大オフェンスに執念のビッグプレーが飛び出す。

 QB高田が激しいヒットを浴びながらも投げたロングパスが、WR冷水の胸にスッポリ収まり、追走するディフェンダーを振り切って83ヤードのTDパスとなり、20−13と勝ち越しに成功する。
 こうなると立命館大の勢いは止まらない。続くシリーズでシーガルズQB岩本のパスをLB八木がインターセプトし、35ヤードのリターンTDで27−13。この間僅か21秒、点差はあっという間に14点に広がり、モメンタムは一気に立命館大に傾いた。

 絶体絶命のピンチに立たされたシーガルズは、QB高橋が負傷をおして再登場。キャッチアップに出るが負傷した足の踏ん張りが利かず、パスに本来の力強さが感じられない。
 勢いに乗った立命館大は、集中力の切れかけたシーガルズに容赦なく襲いかかる。ファンブルリカバーで得た攻撃権を、疲れの出てきたQB高田に代わって2番手で登場したQB椙田がTE加藤へのTDパスで締めくくり、33−13(TFP失敗)。甲子園ボウルMVPの“スーパーサブ”が完全にシーガルズの息の根を止めた。
ポールラッシュ杯受賞の立命・LB八木 (C)M.Sato  結局、終了間際にもFGで加点した立命館大が36−13と完勝。
 8回のターンオーバーを奪取し、シーガルズディフェンスの"ゲット・ザ・ボール"のお株を奪うディフェンス陣の殊勲で、初の日本一の栄冠に輝いた。
 最優秀選手(ポールラッシュ杯)には、立命館大のLB八木康太が選ばれた。

 この試合の明暗を分けたのはターンオーバーであったといっていい。シーガルズは、立命館大を上回る356ヤードを獲得しながら、5インターセプト、3ファンブルロストと、信じられないようなミスを連発して自滅した。
 しかし、これは積極的にボールを狙うというディフェンスの鉄則を忠実に実行し、8回にも及ぶターンオーバーを誘発させた立命館大ディフェンスのファインプレーと評価するべきであろう。

 試合後、立命館大の古橋ヘッドコーチは「前半からランを止められ、後半はスタミナ切れを起こして、苦しい試合だった。今日は選手達が本当によくやってくれた。チーム全員の勝利」と、最後まで集中力を維持した選手達を褒め称えた。

 「昨年の関学が自分たちの励みになった」(立命・主将RB磯谷)。確かに選手個々の能力で比較すると、NFL-EやAFLに出場経験もある国内一流選手を擁する社会人チームに対抗するのは並大抵のことではない。
 しかし学生フットボールの強みである綿密なスカウティング体制と、それに基づいた念入りな反復練習、そしてそれを実現するための時間。そういったものの集大成がチームの総合力となり、「立命はものすごく準備が出来ていた」(シーガルズ・大橋ヘッド)と相手の指揮官を唸らせ、「20回に1回の勝利」(古橋ヘッド)をライスボウルの大舞台で実現させたのだ。

 「関学、京大が達成したライスボウル制覇を自分たちのやり方で成し遂げたかった。次は連覇に挑戦したい」と古橋ヘッド。創部50周年を迎える2003年シーズンの新たな挑戦に意欲をみなぎらせていた。



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