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ライスボウル

解説記事

立命館大学パンサーズ VS 松下電工インパルス
チーム名 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
立命館大学パンサーズ 0 0 0 7 7
松下電工インパルス 7 3 3 13 26

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鉄壁のインパルス!Xリーグが日本王座奪還

 2004年度シーズンの最後を締めくくり、2005年の新たな幕開けを告げる日本選手権・第58回ライスボウルは、10年ぶりの顔合わせとなった立命館大学パンサーズ(関西学生リーグDiv.1)と松下電工インパルス(XリーグWEST)が対戦した。
 試合は鉄壁を誇る松下電工ディフェンス陣が、“RITSガン”こと立命大ショットガンオフェンスを完封。立命大の得点をエースWR木下のキックオフリターンTD1本のみに封じ込め、26−7で圧勝。
 松下電工は10年ぶり2度目の日本一を達成するとともに、XリーグがTOPリーグの座を奪い返した。

 負けられない戦いだった。3年連続で関西学生リーグ代表に奪われ続けたライスボウルチャンピオンの座。試合の勝敗が時代の趨勢を決める競技スポーツの世界は厳しい。

 国内TOPリーグを自負しながらの3連敗。「社会人チームは準備不足」とさえ云われ、折しも当日の試合開始前に行われた日本代表チームの選考に関する記者発表の席上でも、Xリーグ選手を中心に進められるその選考方法に、「もっと学生チームからの参加がないと日本代表とは呼べないのではないか」との声が一部の記者からもあがったほどだ。
 「そのことは今日の試合を見てから考えましょう」(日本協会国際部)。Xリーグにとっても、威信の懸かったまさに崖っぷちの勝負でもあったといえよう。

 「コーチ陣がよく頑張って“いつもどおり”の準備をしてくれた」(松下電工・村上監督)。
 オーソドックスにしてパワフル、そして磨き込んだ技術を感じさせる“巧”のプレー。かつて学生リーグで名を馳せたアスリート達が、社会人となった新天地で築きあげたチームは、豊かな試合経験と鍛錬を怠らぬ日々が造り上げた身体能力で「格闘球技」の醍醐味を披露した。

 試合は立ち上がりから松下電工がペースを掴む。
RB石野 (C)Makoto SATO  QB高橋(幸)、高橋(公)のQB“ダブル”高橋が、数プレーごとに交代してテンポ良くオフェンスを展開。この日好調のWR下川、TE霊山、RB石野、ベテランRB粳田らへボールを散らしながら、徐々に立命大陣内へと攻め込む。

 立命大のパントスナップの乱れによるミスキックから得たゴール前22ヤード。
 RB石野が右オフタックル付近を力強く駆け抜けてTD、7−0と松下電工が先制する。

 この間、立命大オフェンスは松下電工ディフェンスに圧倒され続ける。ランプレーはスクリメージを抜ける前にことごとく潰され、頼みのパスアタックも、激しいプレッシャーから投げ急ぐ立命大エースQB池野がペースを掴めないままに試合が進む。

 「プレーがカタチになる前に潰されてしまうとは・・・」(立命大・古橋ヘッドコーチ)。
 第1Qのボール所有時間は、松下電工の18プレー・10分39秒に対し、立命大が8プレー・4分21秒。結局この支配状況が試合終了まで続くこととなる。
 松下電工フロント陣の強烈なプレッシャーに立命大は、QBに入ったWR木下が3rdダウンからのクイックパントを試みるなど必死の打開策を模索する。

 第2Q早々にも、松下電工はK太田が34ヤードのFGを決めて10−0とリードを拡げるが、「オフェンスはミスが多く、不満だらけの内容」(松下電工・村上監督)。
 この後も松下電工は、何度も得点圏内まで陣地を進めるがTDには至らず、FGも失敗が続く。しかしこれは、圧倒的に不利な状況に追い込まれながらも、要所で相手の進撃を食い止めたDL紀平、浮田、LB田中ら、立命大ディフェンス陣の踏ん張りを称えるべきであろう。

 関学大とのプレーオフ、そして甲子園ボウル。今季の立命大はいずれも後半から立ち直り、試合をひっくり返してきた。そして10年前の対戦でも、松下電工は後半から立命大に追い上げられて薄氷の勝利を掴んでいる。
 「10年前と同じ展開。このままでは必ず向こうのペースになる」。ハーフタイムで村上監督は選手達にそう話し、より一層の奮起を促した。

 果たして立命大ベンチが後半から積極的に動き出す。
 QB池野からボールを受け取った主将RB岸野がWR木下へパスを通すプレーや、スナッパーと後方にQBで入ったWR木下だけになる“ロンリーセンター”など、様々なスペシャルプレーを繰り出す。 
 しかし松下電工ディフェンス陣は、あわてることなくこれらに対応する。
 逆に松下電工オフェンスは、立命大の屈強なフロント守備に対し、TEにDL脇坂を配し、DL山中をボールキャリアとして起用した強力なパワープレーでこじ開けて前進。2本目のFGを成功させ13−0とする。
DB野村 (C)Makoto SATO  第3Q終盤。QB池野からRB佃、そしてQB池野に戻して、サイドラインを俊足で駆け上がるWR木下へのロングパスという、立命大のスペシャルプレーがデザイン通りに決まるかに見えた。

 この決まっていれば間違いなくTDという起死回生のプレーを、WR木下をピタリとマークしていた松下電工のベテランDB野村が値千金のインターセプト。試合の流れを手渡さない。

 最終Q、両チームとも最後の力を振り絞る。
 松下電工は、QB高橋(公)が4thダウンギャンブルを成功させゴール前に進撃して、FGで追加点。
 続く立命大オフェンスを一発でパスインターセプトに仕留めると、さらにFG成功。小刻みながらリードを着実に拡げてゆく。

 その直後、立命大にビッグプレーが飛び出す。キックリターナーに入ったWR木下が97ヤードリターンのTD。その恐るべき身体能力をまざまざと見せつけるプレーであったが、時すでに遅し。

 続いて立命大が敢行したオンサイドキックをKR奥村が落ちついて処理し、敵陣27ヤードとオフェンスのチャンスを作ると、最後はQB高橋(公)が自らのキーププレーでだめ押しのTD。26−7と試合を決定づけた。

 「今日は夢にまで見た待ち望んだ日。フットボールを続けてきて本当に良かった」と、ポールラッシュ杯(MVP)を獲得した松下電工DB野村の瞳が潤む。
 「自分は社会人の方が力があると思っているので、それを証明できて良かった」とDL脇坂。10年前のライスボウル初制覇時にも共に戦ったRB粳田と同じく、村上監督が“おっさんパワー”と褒め称える今でも主戦のベテラン達だ。

 「やはりライスボウルは目標とすべきゲーム」と立命大の古橋ヘッドコーチ。「今日、この舞台に立ったプレーヤー、スタッフとしてのモラルを大切に持ち続け、社会へと巣立つ者、そして来季も共に戦う者、それぞれの成長につなげて欲しい」。
 関西学生リーグの制覇、甲子園ボウルの先にあるXリーグとの最終決戦。常に日本一を目指す立命大フットボールが再び動き出す。

 「今日の結果をベストと捉えるのではなく、ここに至るまで何をして頑張ってきたかを気持ちの中で持ち続けないと、また10年間優勝できない」。既に来季を見据えて、最後のハドルで檄を飛ばす村上監督。

 戦士達はしばしの休息を経て、2005年の新たなスタートへと向かう。