【JAPAN X BOWL】オービック vs 鹿島 試合レポート
’12.12.20
第26回アメリカンフットボール日本社会人選手権ジャパンエックスボウルは、鹿島ディアーズとオービックシーガルズの全勝決戦。過去に何度も名勝負を演じている強豪同士だが、このジャパンエックスボウルを含む決勝では初の顔合わせとなった。
◆オービックの速攻。鹿島の逆転。
開始早々、オービックの速攻が決まる。
自陣28ヤードからの第1シリーズ。QB#6菅原からWR#18木下、#85萩山へのパス、RB#32原、#20古谷のランがテンポ良く決まり連続ダウン更新。敵陣22ヤードへと進攻すると、スクリーンパスを受けたRB古谷が一気に駆けあがりTD。オービックが先制に成功する。(TFPキック成功/オービック7-0鹿島)
このまま勢いに乗りたいオービックだったが、鹿島ディフェンス陣もここから踏ん張り、DB#21加藤(公)がパスインターセプトで攻撃を断ち切るなど要所を締めて、レッドゾーンへの侵入を許さない。
2Q5分29秒からの攻撃シリーズで、鹿島オフェンス陣が反撃に出る。
負傷欠場のQB#12加藤に代わって、試合を任されたQB#10山城、自陣10ヤードからのシリーズ。「相手のリアクションが早いのでショートパス中心に攻めた」(QB山城)と、ここまでラン中心だった攻撃パターンをショートパスに切り替えてドライブ開始。WR#2中川、#7植村、#18永川らへ連続してパスを成功させ、一気にゴール前13ヤードと陣地を進める。
ここからオービックのゴールラインディフェンスに4thダウン1と追い込まれるが、ギャンブル勝負。RB#29丸田が中央を飛び込んみ、押し込んでのTD。鹿島が同点に追いつく。(TFPキック成功/オービック7-7鹿島)
これでペースを掴んだ鹿島。続くオービックの攻撃で、この日好調のDB加藤(公)がファンブルリカバーで攻撃権を奪うと、K#14青木が37ヤードのFGを成功。鹿島が逆転して、前半を折り返す。(オービック7-10鹿島)
◆オービックが逆転。鹿島も再逆転。
前半をリードして折り返すという願ってもない展開に明るいムードの鹿島。しかし「俺たちが負けるわけがない」というムードが漂っていたというオービックのロッカールーム。Xリーグ公式戦34連勝中というチャンピオンチームの底力が後半から発揮される。
後半最初の攻撃シリーズ。勢いに乗った鹿島が、QB山城からWR#81宮本、RB#20岩倉へのパス成功で敵陣31ヤードへと前進したところで、オービックDL#23ビーティJr.のパスインターセプトで、オービックが自陣43ヤードからの攻撃権を得る。
QB菅原からWR#7池井へのパス成功でダウン更新。敵陣にはいると、RB古谷、原が連続して好ゲインを見せ、ゴール前9ヤード。ここでQB菅原からWR#10森へのTDパスがヒット。オービックが逆転する。(TFPキック成功/オービック14-10鹿島)
鹿島も食いさがる。「山城はパスの力もあるし、追いかける展開になっても慌てることはない」(鹿島・森HC)。
続く自陣29ヤードからのシリーズ。QB山城からWR永川へのパスでダウンを1つ更新したところで、QB山城からWR宮本へロングボム一閃、45ヤードのTDパスが決まり鹿島が再逆転する。(TFPキック成功/オービック14-鹿島17)
◆チャンピオンチームの底力。
だがオービックの勢いも止まらない。
返す自陣32ヤードからのシリーズ。RB原が右サイドライン際をロングゲイン、敵陣39ヤードへと進攻。ここからWR#83清水、萩山、木下らへショートパスを繋いで、ゴール前1ヤードに迫る。RB#21中西のランは鹿島ディフェンスに押し戻されるが、次のプレーでWR萩山へのTDパスが成功。TFPのキックはブロックされるが、オービックが再び逆転する。(TFPキック失敗/オービック20-17鹿島)
「オービックに勝とうという気持ちで一つになってやってきた」(QB山城)という鹿島も追いすがる。
3Q終了間際から始まった自陣21ヤードからのシリーズ。RB#38佐藤の20ヤードラン、WR#11前田への連続パス成功でゴール前24ヤードへと攻め込む。
しかしここでオービックLB#5坂田がQBサックで押し戻す。鹿島は同点FGを狙いに出るが、これは不成功に終わる。
粘る鹿島。LB#37大舘やDL#91倉持の素早いタックルでオービックオフェンスをパントに追い込んで得た自陣12ヤードからの攻撃。
WR永川へのパスが成功してダウンをひとつ更新、だが続く攻撃でRB丸田が痛恨のファンブル。これをオービックDB#34丸山がリカバーし、オービックが敵陣38ヤードからと絶好のチャンスを得る。
◆明暗を分けた4Qの追加点。
オービックはこのチャンスに、QB菅原からWR木下へのパス、RB古谷のランでゴール前6ヤードと前進すると、最後はRB中西がタックルを受けながらもエンドゾーンに駆け込んでTD。貴重な追加点を奪う。(TFPキック成功/オービック27-17鹿島)
鹿島も諦めない。試合の残り時間2分42秒。自陣16ヤードから始まった攻撃で、QB山城からWR前田へ51ヤードのロングパスが成功。一気に敵陣28ヤードへと前進すると、WR前田へのTDパスを成功させ、食いさがる。(TFPキック成功/オービック27-24鹿島)
残り時間1分56秒。鹿島が逆転への望みをかけたオンサイドキック。ボールが空中に高く舞い、落下地点に両チームの選手が密集する。
結果はオービックがカバー。この瞬間、オービックの3連覇達成、7度目の優勝が決定。Xリーグ公式戦連勝記録も35に伸ばした。
MVPにはオービックRB#32原卓門、MIPは鹿島DB#21加藤公基、ウォリアーズアワードには鹿島OL#75井澤健がそれぞれ選出された。
「常に自分たちがターゲットとされる中で、昨年の延長線上ではやられてしまう。本当に苦しいシーズンだった」とオービックの大橋ヘッドコーチ。「素晴らしい選手とファンに囲まれて負けさせるわけにはいかないチーム。もう一つ試合をする権利を与えられたので次も目標とされるに相応しい、最高のフットボールをお見せしたい」と、気を引き締めた。
「ミスもあったがそれ以上にいいプレーも出来たと思う。準備してきたことは全部出せたが、相手を越えるところまでは出来なかった」と鹿島の森ヘッドコーチ。3年ぶりの優勝への願いは途絶えた。これでライバルとの対戦成績は8勝7敗となった。「一つひとつの勝負どころをきちんと勝っていかないといけない。あらゆる面でレベルアップして、精度をあげ、再び挑戦したい」と、次を見据えた想いが既に高まっている。