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TOP > 今節のレポート&マッチレポート > QB道場長コラム第1回「PAC12QBの衝撃とジャパニーズフットボールのしたたかさー前編ー」

’12.09.16

皆さん、はじめまして。
「QB道場」を主宰しております、新生(シンジョウ)と申します。
このコラムでは、私の長年のQBならびにコーチとしての経験を活かして、ちょっとマニアックな観点から、エックスリーグのフットボールの面白さをお伝えしていければと思います。どうぞお付き合い下さい
さて、第1回は今シーズンのリーグ開幕を飾るに相応しい熱戦となった富士通フロンティアーズvsIBMビッグブルーの一戦を取り上げたいと思います。
この試合の注目は何と言ってもIBMのQB・ケヴィンクラフト選手。米国カレッジフットボール界の中でも強豪ひしめくPAC12の名門校・UCLAで活躍してきたクラフト選手がどんなパス攻撃を見せてくれるのか?私も非常に楽しみに東京ドームに向かいました。
クラフト選手の立ち上がりは期待に違わぬパフォーマンス。試合開始から地面に一度もパスを落とす事なく17回連続(!)でパスを成功させ、あっという間に2本のタッチダウンを奪います。
おそらく見ていた観客に皆さんはいとも簡単にパスが決まり続けていく様子に驚かれたのでは無いでしょうか?
私がこの試合の序盤で感じたクラフト選手の上手さのポイントは大きく2つ
①簡単なパスを、早く・正確に投げ続ける
日本のチームのパス守備の特徴としては、QBから遠い、フィールドの広いサイドのCBの手前のスペースを緩く守る傾向があります。これは日本人QBの肩であれば、勝手に投げ損じてくれる、または投げてもリリースが遅く、ボールが緩いため投げられてからでも追いつけてしまうから。
しかし、クラフト選手が試合序盤から投げ続けたこのスペースへのパスは、リリースのタイミング・球速ともにかなり早かったため、このテンポに慣れていない富士通のディフェンスは、パスを決められただけでなく、IBMのレシーバー陣にしばしばキャッチ後のランでの前進を許してしまっていました。
②LBの後ろのスペースへのパスが絶妙
ディフェンスの第2列に居るLB(ラインバッカー)の後ろに出来るスペースを攻めるパス攻撃の精度は、アメリカと日本の違い(差)が大きく現れる部分のひとつです。
例えばIBMが第1Qに2本目のタッチダウンを奪ったプレー。<図①参照>
富士通のディフェンスは、奥行きの無いゴール前のフィールドを、7人で縦に分割する形でパスを守ってきました。
 これに対し、クラフト選手はLBの頭越しにふわっとボールを浮かして、#40スタントン選手にいとも簡単にパスを成功させてしまいました。
また、第3Qに#17小川選手に投じたパスもお見事でした。<図②参照>
『低すぎればLBに間を割られる』、『浮かしすぎると第3列にいるSF(セーフティ)に後ろから追いつかれてしまう』、という僅かなスペースに絶妙のタッチでパスを成功させました。
恐らく、頭越しにパスを決められてしまったディフェンスの選手は、「カバーしている」という感覚でいた所にいとも簡単にパスを決められてしまい、少々驚いたのではないでしょうか…
「エンドゾーンの隅」と「LBとSFの隙間」、このスペースへのパスの精度が上がると、エックスリーグのフットボールはよりエキサイティングなものになっていく、と私は考えています。
そういう意味で、クラフト選手の日本でのパフォーマンスが、今後、エックスリーグのパス攻撃の「当たり前」のレベルを引き上げていってくれるのでは無いか、という期待も膨らみます。
さて、たちまち二本のタッチダウンを奪われた富士通ディフェンスでしたが、試合後にディフェンスコーディネーター・延原コーチに話を聞いたところ、サイドラインに戻ってきたディフェンスメンバーに「焦りは無かった」、とのこと。
そして、その言葉通り、富士通ディフェンスは第2Q以降、前進は許しつつも、ついにタッチダウンを奪われることはありませんでした。
次回後編では、その富士通ディフェンスの冷静なアジャストメントについて、取り上げて見たいと思います。引き続きお付き合いください。
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