最新情報 試合日程と記事 個人記録ランキング リーグ戦星取表 リーグ記録集 サイトマップ 関連リンク TOPページ

解説記事

関西学院大学ファイターズ VS アサヒ飲料チャレンジャーズ
チーム名 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
関西学院大学ファイターズ 0 27 3 0 30
アサヒ飲料チャレンジャーズ 6 7 0 14 27

日本一へ有言実行。関学の“夢”が実現!
 アサヒ飲料チャレンジャーズの連覇か、関西学院大学ファイターズが初の栄冠を勝ち取るのか。21世紀最初のシーズンをしめくくる日本選手権・第55回ライスボウルが2002年1月3日、東京ドームで行われた。
 試合はチャンスをことごとくものにした関学が、アサヒ飲料を下し、5度目のライスボウル出場で初の日本一の栄冠を手にした。

 戦前の予想ではアサヒ飲料有利の声が圧倒的に多かったのは事実だ。
 ここ数年、ライスボウルでは社会人が学生を圧倒的な力の差でねじ伏せていること、そして何より山田・河口の両プロLBを中心とするアサヒ飲料の強力ディフェンス陣から充分な得点を奪うことは、いかに今季は圧倒的な力で学生日本一の座を奪回した関学であろうと至難の技であろう、ということだった。
P榊原が走り1stダウン獲得  (C)Makoto SATO  しかし関学は今季最高の本気だった。
 「日本一」を目標に昨年の2月からこだわってきたチームの集大成 ―「勝ちますよ」と試合前に力強く宣言した関学・小野コーチのその言葉に意志が表れていた。

 先制したのはアサヒ飲料だった。立ちあがりの第1Q、両チームオフェンスの模索が続く中、関学RB杉原がファンブルしたボールをアサヒ飲料が押さえターンオーバー。敵陣34ヤードからという絶好の位置から攻撃権を得る。

 このチャンスにRB中村(多聞)や中島のランでダウンを一回更新すると、最後はショットガン隊形からRB中村が左オープンを駆け抜けTD。
 TFPのキックは失敗に終わるものの、アサヒ飲料が6−0と先制に成功する。

 アサヒ飲料が先制をしたが、ここから試合は一気に関学のものになっていく。
 まず直後の関学自陣34ヤードからのシリーズ。関学エースQB尾崎の自らのランや、WR山本へのパスなどで2回のダウン更新。敵陣30ヤードまでボールを進めるものの4thダウン3ヤードを残してパント。
 しかし、このパント隊形からスナップを受けたP榊原が、そのまま一直線に走りだし待ちうけるアサヒ飲料DL森にタックルされながもファーストダウンを獲得。
 このP榊原のプレーをきっかけに関学の集中攻撃が始まる。

 まず、このチャンスにQB尾崎が冷静にWR東畠にヒットさせ、ゴール前3ヤードまで進むと、最後はRB杉原が左オープンに飛び込んでTD。TFPも成功させ、7−6と逆転に成功。
果敢にパスを投げ込むQB尾崎  (C)Makoto SATO  直後のキックオフ、アサヒ飲料にとっては悪夢が襲う。
 リターナーに入ったアサヒ飲料WR桃澤が、関学LB野田の強烈なタックルを受けボールをファンブル。これを関学LB田中が押さえ攻撃権は再び関学に。
 この敵陣31ヤードからのオフェンスシリーズ。関学QB尾崎が、アサヒ飲料パスカバーの僅かな隙をついてTE榊原にピンポイントのパスを通しゴール前11ヤードへ進めると、こんどはQB尾崎が、LB山田の早いリアクションを逆手にとったカウンタープレーでエンドゾーンまで走りきりTD。関学が14−6とする。

 さらに関学は、続くアサヒ飲料のオフェンスをパントに追いこむと、自陣37ヤードからのオフェンスをロールアウトからのオプションや、RB三井のドローで敵陣39ヤードまで進める。
 最後は、この日ポールラッシュ杯を獲得したQB尾崎が右のロールアウトから見事なカットバックを見せて、左オープンを駆け上がりTD。20−6とした。

 アサヒ飲料の悪夢はまだ終わらない。さらに直後のシリーズでRB中島が、関学DL石田のタックルを受けファンブルし、ターンオーバー。
 今度はゴール前26ヤードからという絶好のチャンスを得た関学。最初のプレーでQB尾崎からのパスを取ったTE榊原が、走りこんできたRB三井にそのままピッチする「キャッチ&ラテラル」のスペシャルプレーで、一気にゴール前9ヤードまでボールを進める。

 ここはアサヒ飲料ディフェンス陣も踏ん張って4thダウンまで追いこむものの、最後はQB尾崎がボールをねじ込んでTD。
 第2Qの10分あまりで一気に関学が27−6と大きくリードすることに成功、アサヒ飲料自慢のディフェンス陣を凍りつかせた。信じられないといった表情で天を仰ぐアサヒ飲料LB山田。

 予想以上のリードを許したアサヒ飲料も意地を見せる。前半残り2分で迎えた自陣44ヤードからのオフェンスシリーズを、関学の反則などに助けられつつ、残り33秒でゴール前1ヤードまで進むと、QB桂がTE玉井にパスを通しTD。13−27として前半を終了する。

RB中村多聞vsDL石田力哉  (C)Makoto SATO  後半に入ると試合は一転、パント合戦の様相を呈してくる。

 アサヒ飲料はエースRB中村を中心にボールを進めようとするものの、甲子園ボウルに続いて、この日も再三LBの位置に構える主将DL石田を中心とした関学ディフェンスの早い集まりの前に、思うようにゲインが奪えない。
 一方の関学もRB三井のドローやTE榊原へのパスなどで時折好ゲインを見せるものの、落ち着きを取り戻したアサヒ飲料ディフェンスを前に得点機を作ることが出来ない。

 しかし、後半最初に点を取ったのは関学だった。
 アサヒ飲料は自陣30ヤードからのオフェンスを1回のダウン更新でパントに追いこまれると、P田中が東京スーパーボウルで成功させたパント隊形からのパスを敢行。
 しかしこれを関学LB星田にインターセプトされ、関学に自陣49ヤードからの攻撃権を与えてしまう。
 ここでRB三井がドロープレーで大きくゲイン。一気にゴール前10ヤードまで進み、FGの3点を追加することに成功、30−13とした。

 このままで終わるはずがない ―東京ドームにいる誰もがそう感じていた。
 そしてその予感は的中する。

 第4Qに入り、アサヒ飲料が怒涛の追い上げを開始。ディフェンス陣の激しいヒットで関学のファンブルを誘い、自陣43ヤードからの攻撃権を得る。
 最初にQB桂からWR梅田へパスを通し敵陣41ヤードまで攻めると、この後、実に3回もの4thダウンショートのギャンブルを全てRB中村のランで成功させ、ゴール前2ヤードまで迫る。最後はRB中村がエンドゾーンに飛び込んでTD。20−30とし、反撃の狼煙を上げる。

 しかし一方で、関学のディフェンスの驚異的な粘りの前に、余分な時間を消費していたのもまた事実だった。
 このシリーズ、アサヒ飲料は5分を消費。この時点で試合は6分半が残っていたが、続く関学オフェンスのQB尾崎のロングゲインを含む絶妙のボールコントロールもあって、ようやく次のシリーズが回ってきたのは残り2分2秒となってからだった。
胴上げされる鳥内監督  (C)Makoto SATO  残り2分で10点差。1TDでは追いつけない。逆転のためには2TD以上が必須とされたこの時、アサヒ飲料は自陣4ヤードからのオフェンスというピンチに立たされていた。
 しかしこのピンチを脱したのは、昨シーズンからチームを支えてきたQB桂だった。QB桂は、自らの足で自陣15ヤードまで進めると、そこから6回連続でパスを成功させTDを奪う。最後はWR佐々木がとったボールを強引にエンドゾーンに押し込む執念を見せた。
 TFPはキックを選択、これで27−30と3点差に迫った。

 残り37秒。最後のキックオフに勝負の全てがかかることになった。逆転にむけ、オンサイドキックを試みるアサヒ飲料。それを待ち構える関学。
 K田中の蹴ったボールが二転三転。両チームの選手が殺到する。押さえたのは関学LB坂本。

 東京ドームの一塁側スタンドに陣取った関学応援団からカウントダウンが聞こえ始めていた。創部から61年目、日本フットボール界を常に支え続けてきた「超名門校」関学にとって初めての、そして学生代表としては96年京大以来、6年ぶりのライスボウル勝利へのカウントダウンだった。

 そしてそれが「0」になる。関学がシーズン当初から掲げた目標であり、「関学全体の夢」(RB三井)でもあった日本一がついに果たされた瞬間であった。


試合結果を見る

個人記録を見る