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解説記事

アサヒ飲料チャレンジャーズ VS 松下電工インパルス
チーム名 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
アサヒ飲料チャレンジャーズ 0 0 0 14 14
松下電工インパルス 7 0 0 0 7

手に汗握る最終Qの攻防。LB山田の決勝TD!
 アサヒ飲料チャレンジャーズと松下電工インパルス。因縁のライバル関係にある両者にいよいよ雌雄を決する時がきた。
 2年連続で同じ顔合わせとなった第15回東京スーパーボウルが12月18日(火)東京ドームで行われた。試合は両チームとも看板とする強力ディフェンス陣の奮闘と両者のライバル心が絡み合い最後まで目の離せない好ゲームになった。

松下電工DL脇坂 (C)MakotoSATO  意外な形で先制点を奪ったのは松下電工だった。
 試合開始直後シリーズの2ndダウン。まだ硬さの残るアサヒ飲料QB桂が、この日初めて投げたパスをCB野村がインターセプト。自陣49ヤードからの攻撃権を得る。
 その最初のプレー、松下電工が選択したのはRB樫野が右オフタックルのラン。これはLB山田、河口を擁するアサヒ飲料があっさり止めたものかと思われた。
 しかし。RB樫野は自分の目の前に出来た自軍OLと相手ディフェンス陣の人の山をスルリと抜け、オープンに走路を見出すとそのまま一気に加速。高々と片手を挙げてエンドゾーンまで走り抜けTD。
 松下電工が試合開始わずか1分あまりで7−0と先制に成功する。

 この得点を最後に両者のディフェンス合戦は次第にヒートアップしていく。
 RB中村(多)のランプレーに活路を見出そうとするアサヒ飲料オフェンスに、DL脇坂、兎耳山、LB霊山、DB野村らを中心に多彩な仕掛けを見せる松下電工ディフェンス陣が襲いかかる。
 一方、アサヒ飲料ディフェンスも河口、山田の両「プロLB」ばかりでなく、DL加藤らがスピード感溢れるプレーで松下電工QB高橋(公)にプレッシャーをかけ、RB樫野、粳田らのゲインを全く許さない。

 パントに終始した前半、両チームともドライブはおろか、ダウンの更新すらままならない状況が続いた。前半の間に両者が蹴ったパントは、なんと合わせて15回。
 敵陣に進んだのは最初の松下電工のTDシリーズを除いては両者とも1回ずつ、2回以上続けてダウンを更新したシリーズはなし、という状況がディフェンス合戦の激しさを物語る。

 後半に入って先にペースを掴んだのは松下電工だった。お互いにパントを一回づつ蹴ったあと、松下電工は自陣39ヤードからのオフェンスを再三3rdダウンに追い込まれつつも、RB粳田のカウンターやWR古本へのパスでしのぎ、ダウンを3回更新してゴール前23ヤードまで迫る。
 しかし、ここでもアサヒ飲料DE古河の活躍や、ブリッツなどでゲインを奪えず結局はパント。松下電工応援席からため息が洩れる。

P田中のパスを受け取るWR桃澤 (C)MakotoSATO  この息詰まるディフェンス戦に大きな風穴を開けたのはアサヒ飲料だった。
 第4Q。アサヒ飲料は自陣41ヤードydからオフェンスを開始する。ここでもQB桂が果敢にパスを試みるが6ヤードを残し、敢えなく4thダウンパントに追いこまれてしまう。
 しかしここで、パント体型からスナップされたボールをパンター田中がWR桃澤に絶妙のピンポイントパス。これが見事に成功し、一気に敵陣34ヤードへ。

 続けてこの勢いにあと押しされたRB中村(多)がスイープで大きくゲイン。松下電工のタックル後の反則もあってボールはゴール前8ヤードに置かれる。

 たまらず松下電工はここでタイムアウト。「タッチダウン」コールに沸くアサヒ飲料応援席。「ディフェンス」コールに沸く松下電工応援席。タイムアウトが解かれプレー再開。
 プレーは再びRB中村(多)のスイープ。リアクションの早い松下電工ディフェンス陣を前に、一度スピードを緩めるRB中村(多)。しかし走路を見出すと再加速。
 そのまま一気にサイドライン際を駆け上がり、最後は倒れながらも手だけを伸ばしてボールをエンドゾーンに押し込んでTD。遂にアサヒ飲料が同点に追いついた。
 応援席に向かって怒号を上げるRB中村(多)。まさに気迫で奪った同点TDだった。

 同点になったとはいえ、お互いにディフェンスチームが試合を支配していることに変わりはなかった。パントの応酬が続き、時間だけが消費されていく。

LB山田の決勝TD (C)MakotoSATO  しかしこの試合を象徴すべく、決勝点を奪ったのはそのディフェンスチームだった。
 残り時間3分を切ろうかという時間で松下電工は自陣14ヤードからの攻撃権を得る。RB粳田のラン、WR下川へのパスが不発に終わり、3rdダウン10を迎える。

 松下電工にとって実にこの日19回目の3rdダウンコンバージョン。右にスプリントアウトしたQB高橋(公)がパスターゲットを探す。アサヒ飲料LB河口がブリッツに入るのを感じていたのだろうか。アクロスを走るWR塚崎にターゲットを定め、パスを放る…。

 その瞬間、ボールに飛び込んできたのはLB山田だった。LB山田はパスを奪うとそのまま誰もいない左オープンを駆け抜けTD。我慢に我慢を重ねたアサヒ飲料ディフェンス陣が自らもぎ取った逆転のTDだった。

 だが試合はまだ終わっていない。
 松下電工は残り2分20秒を残して自陣32ヤードからのオフェンスを開始する。高校時代から再三の逆転劇を演出してきた松下電工QB高橋(公)にとっては充分な時間だった。
 QB高橋(公)はWR塚崎、古本や4thダウンギャンブルからのTE門脇へのパスなど9プレーを費やし、ゴール前14ヤードまで陣地を進める。

松下電工QB高橋公一 (C)MakotoSATO  1stダウンではパス失敗。反則もあり2ndダウン15。ボールオン19ヤード。残り8秒。

 全ての状況があの時に酷似していた。97年甲子園ボウル、QB高橋の奇蹟。それを知る松下電工ベンチはその再現を願い、アサヒ飲料ベンチはフィールドの選手たちを信じた。
 2ndダウンからのパスは、松下電工からアサヒ飲料に移籍したDB秋山が鮮やかにカット。パスインコンプリート。

 残り3秒、最後のプレーにこの試合の全ては委ねられた。
 左サイドに3人のレシーバーを配置した体型からQB高橋(公)が左にスプリントアウト。ついに最後のパスが放たれる。「決まったと思った・・・」とQB高橋(公)。歓喜に沸いたのはアサヒ飲料ベンチだった。
 両軍の選手がもつれる中、WRに入った松下電工ベテランCB野村に向けて投げられたダ円球は、キャッチされることなくフィールドの外に転がった。

 東京スーパーボウル史上稀に見るディフェンシブゲームはアサヒ飲料に軍配。社会人王座連覇を果たした。社会人王座連覇は奇しくも94、95年シーズンの松下電工が果たして以来のことであった。



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