「初めて見たフットボール ● ライスボウル観戦ノート」


 大好評の初心者観戦コラム『フムフムフットボール』のシリーズ第4弾!今回はライスボウル特集です。

Photo&Text by 鈴木菜穂子(会社員)  


 「新年あけましておめでとうございます」。
 そんな挨拶がそこかしこで飛び交う1月3日東京ドーム。この日は、アメリカンフットボールの丸くナイひしゃげたダ円球ボールも、そこかしこで飛び交うことが予想されておりました。

 そうです。学生優勝チームの関西学院大学と、Xリーグ優勝チームのアサヒ飲料チャレンジャーズの日本選手権「ライスボウル」が始まるからです。
 NHK教育テレビで放送もありましたので、ごらんになられた方もいらっしゃるでしょうね。私も帰ってからビデオで録っていたのをみましたが、ナマ会場の熱気はものすごいものでした。
 フットボール記者の皆さん達も「これが始まらないと年があけない!」と口をそろえて言っておられて、気合が入っております。それ以上に気合が入っているのは、両チームのチアリーダーさんと観客、そしてなによりも主役の選手達でした。

 学生チームの4回生にとっては、これが最後のゲーム。まるで高校野球の甲子園大会のような雰囲気があるんですよね。
 対するアサヒ飲料も日本一連覇がかかっています。社会人らしい落ちついた感じの中に、シーズンをシメると言う空気もあって、これまたものすごく気合がはいっております。

 会場は見慣れたXリーグの応援席と、関西学院大のブラスバンドが入った(私には)ちょっと新鮮な感じのする応援席とに分かれ、まったく異なった色合いが選手権気分を盛り上げます。

 この日は久々の大寒波到来。積雪の為に新幹線が遅れ、東名高速道路も通行止め。関西からの応援団が間に合うのかどうか、ちょっと心配ではありました。
 うーん。大丈夫かな。関西学院大の応援団…。


昼のドーム前はこんな感じ

NFLエクスペリエンスの様子。盛り上がってます。

 ドーム前は12月18日の東京スーパーボウルの時と同じように、NFLエクスペリエンスの特設会場が設けられ、子供連れやカップルが皆で参加していて、こちらも大変に盛り上がっておりました。

 私もあのダ円球のボールを投げるゲームをやりたかったのですが、カメラを持っていたので断念。皆さん楽しそうに順番を待っていました。
 ボール投げは、3個のうち2個が的に入るとキーホルダーが貰えるんですって。うーん。いいなぁ…。


女性チームによるフラッグフットボール

お手軽なので、職場や学校でもできそうです。

 ライスボウルは午後2時からなのですが、その前に子供のチームや、女性によるチームの試合などがありました。

 初めてフットボールを見に行った時、サイドラインの記者さんとかが、ささっと素早く逃げるシーンに「なるほどー。あれは突っ込まれたらこっちの身が危ないなー」と思ったものでした。
 普段は場内アナウンスや応援の歓声とかで、観客席からは聞こえにくいかと思いますが、真近でみると『がちっ!!』とか、『ぼすっ!!』と激しくぶつかる音がして怖いくらいなんです。

 そんな激しいスポーツですから、ちょっとお手軽にゲームというわけにはいかないのだろうな、と思っていたのですが、なんと「フラッグフットボール」って言う競技があったんですね。

 「フラッグフットボール」。初めて聞いた単語です。
 アメリカンフットボールとどう違うのかと言いますと、一番大きな違いは、ボールを持った相手をタックルして止めるのではなく、選手が腰に付けているフラッグ(リボンのような長い布でした)を取った時点を、止めたことにするんだそうです。

 ・・・と言っても説明だけではやっぱりわからなかったので、実際に見てみることにしました。(↑上の写真がそうです。)

 その他にもフィールドの大きさとか人数とか、いろいろ細かい点は実際のフットボールとちょっと違うのでしょうけれど、大きな違いはそこですね。だから皆さん軽装でプレーしています。これはお手軽で、なかなか面白そう。
 これなら学校体育の授業とか、休み時間にでも出来そうですよ。


コイントスにはお正月らしく着物の女性も。

関学の応援席。なんとか間に合ったようです。ほっ。。

 学生、社会人の試合って、ちょっとそれぞれに雰囲気が違う感じがしませんか。

 実は今回の為に学生チームの試合も、いくつか見ておいたのですよね。
 それまではXリーグの試合しか見てなかったのですが、学生のプレーはどこか違います。最近ちょっと見はじめた私ですらわかるぐらい違うんです。そういうところに気づくとまたおもしろい。

 学生チームの、特に4回生はこれで最後!っていう気持ちがあるからか、ひたむきでとにかく一生懸命なんです。試合が終ると泣いている人もいたりして、ついついきゅん…ってなっちゃいます。
 今日もそんなシーンがあるのかな?って、学生チームの試合運びに注目でした。


この瞬間って何回見ても息を止めてしまう…。

ドームに監督もコーチも舞います。

 試合の方は予想通りであり、予想をくつがえすような展開。(どっちだかわからない言い方だけれど)

 第1Qにアサヒ飲料が先制しましたが、第2Qで関西学院大が大量得点。試合後に監督さんも「あんなに大量得点が取れるとは思わへんかったし」(嬉しー!、実は関西弁好き・・・)と言うほどの勢いでした。

 東京スーパーボウルで山田晋三選手のプレーを見て、すっかり感心してしまった私としては、アサヒ飲料が有利かなー?と思って、関西学院大の方を応援していたのですが(判官贔屓です)、その予想は思いっきり外れたのでした。

 第4Q、アサヒ飲料のものすごい追い上げ。そして時間切れ。歓喜に揺れる関西学院大のスタンド。
 雪で来られなかった人もいたのでしょうけれど、その人達の分も背負ってのすっごい盛り上がりです。結局、関西学院大の日本一が決まり、学生さん達はまたまた男泣きを見せたのでした。


監督さんの勝っても厳しいシメのお言葉。

関学選手の男泣きについついもらい泣き。。。

 今回は嬉しいことに、NHK教育テレビでナマ放送がありました。
 「自分が見た試合をその日のウチにもう一度ゆっくりTVで見る」ということをしてみたかったので、これは助かる!とばかりにビデオ録画しておき、家に帰ってさっそく見てみることにしました。

 この数回の「フムフム」で、ちょっとダケですがフットボールのルールについて書いてきました。
 私の場合は、試合を見ながらわからないとその場ですぐに聞く、と言うことが出来たのですが、初めて来た人で聞く人がいない場合はわからないことが多いですよね。
 前回の時は「これだけは知っておくと良い」というポイントがわかったのですが、今回テレビを見てさらにそれを確信しました。


審判さんが沢山いて初心者にはそれも謎…。
ここをクリックすると拡大画が出ます。
チェーンクルーによる10ヤードの計測

 NHKではさすがと言いましょうか、副音声で「わからない人」用に解説していましたね。あの大林素子さんが聞いていた内容は、まさに私がその場でちょこちょこと聞いていたことでした。
 やっぱり皆さん同じことを疑問に思うんだなー、と妙に納得したりして。

 でも普段のテレビ中継ではこういうものはありません。今度は主音声を聞いてみることにしました。
 とても丁寧に解説しておられたのですが、それでも初めての人にはおそらくさっぱりわからないのではないかな?と思いました。

 何がわからないのか?

 困った質問で「わからないトコがわからない」と言われることがあります。まさにそれがわからなかったのですが、今回はそこがわかったんですねー。私ってば。(ややこしくってすみません)

 テレビの解説では当たり前ですけれど、試合の流れを解説します。途中で反則とかがあると、それも詳しく説明してくれます。
 盲点ですが、これがわかりにくくさせるポイントその1だったのです。

 初心者にとってフットボールの反則は本当に不可解です。実際に試合をじーっと見ていてもあまりよくわからないんです。ましてや競技のルール自体が判ってないんですもの。
 どんな反則なのか?なんて…。それを最初からわからせようという方が無理ってものです。

 ・・・と言うことで、まず私の場合は反則が起こっても「そうなんだー」と流して、ルールを覚えることを優先しました。

 前回東京スーパーボウル観戦レポートで書いたような「4回の攻撃で10ヤード進む」とか、そういう本当に基本的なことを先に覚えたんです。なるほど。こちらはすんなり頭に入ってきます。なにしろ試合を見ていればわかるんですから。
 今回は、10ヤードとれたかなー?という微妙な時に、チェーンクルーが距離を計測するシーンを見ることができました。(↑上の写真をクリックすると大きく出ます)
 このような試合の大事なポイントで「あれナニー?」となるから、初心者には楽しみかたもわからないことが多いのです。

 もう一つのポイントは専門用語です。
 NHK副音声の方でもたまにポロっと出ていて、大林さんがすかさず「それなんですかー?」って突っ込んでいたのですが、専門用語がでると全くわからないんですよね。

 「ファンブルしたボールを…云々」
 『ファンブル』?なんだろう?とまずそこで捕まってしまうのです。こういう単語をよく聞いてみると、当たり前ですが、英語が基礎になっているようです。
 その中の簡単な言葉から覚えていけば、こちらもすんなりと入れるようです。

 そうして一つ一つルールや用語を覚え、なんとか一人で見ることが出来る頃になって、やっと反則にまで目がいくようになるのです。
 もちろん個人差はあるのでしょうけれど、私はそういう流れでした。ある程度わかってから、やっと反則の内容に目がむけられる余裕ができた、って言うのでしょうか…。

 でもですね。それでもまだ見えない時の方が多いんです。
 審判さんが黄色いハンカチをなげても、なにが反則なのかスグには判りません。「ホールディング!」とか言われてもどんな反則なのか判らなかったり…。

 こういうことがすべて理解できるようになると、おもしろさも倍増なのでしょうね。まだまだ奥が深いぞ!アメリカンフットボール!

 さて。今シーズンはこれで終りです。
 9月の秋本番までゲームがなくって寂しい思いをしてしまう人もいるでしょうね、と言ってる私がそうだったりして。

 選手の方はこのオフシーズンが身体作りの場になるのでしょうから、これからがまた大変でしょう。でもまた次のシーズンもおもしろい試合を見せてくれると思うと、待っている間もなんだか楽しいものです。


もう一試合できそうなほど元気な関学の選手達。

MVPを取った尾崎選手にっこり。

 数回でしたが、観戦初心者まるだしの私の文章を読んでくださった方。一緒にフムフムとうなずいてくださった方。
 有り難うございました。

 こうやって書いてみることによって、私自身もより深くゲームを楽しめたと思います。またなんらかの機会に、まだまだ奥が深いアメリカンフットボールに関われたら幸いです。