’12.10.04
過去の対戦ではすべて勝利を収めているIBMが今回の対戦でも優位だろう。昨季10月の対戦でも同軍が38−7、また今春の東日本交流戦でも35−21と勝利しているが、今季はQBクラフトとRB末吉を加え攻撃力を増しており、東京ガスにとってはさらに厳しい戦いが予想される。
しかも、開幕から時間を経てIBMは徐々に連携を深めつつあるであろうから、東京ガスとしては歯止めをかけるのが余計に大変だ。去年はフランスリーグでプレイしたクラフトは、以降1年間以上実戦から遠ざかっていたことや、プレイコールなどチーム内での連携をすべて英語にするという試みのために開幕直後はツメの甘さが目立ったが、今季4戦目となるこの試合では同軍の精度の高いオフェンスが展開されるのではないか。
クラフトの率いるオフェンスの怖さは何と言ってもパス攻撃だ。彼はクイックリリースから中短のパスを確実に決めにくる典型的なウェストコースト型のQBで、しかも背が高く視野が広いために多くのパスターゲットに投げ分けることができるから、相手ディフェンスにとっては簡単には止められない。
東京ガスが試合を少しでも接戦に持ち込むには、ディフェンス陣の奮闘が不可欠だ。鍵はディフェンスの意図をいかにクラフトに悟られないようにするか、だ。オフェンスのプレイコールも自ら担う同選手は、相手ディフェンスの守備隊形を見てプレイコールを変更するが、その彼の判断を少しでも曇らせるためにディフェンスはディスガイズ(変装)を用い、意図を読まれないようにするといった工夫が必要となってくる。
そしてポケット内のクラフトにいかにプレッシャーをかけられるかも重要だ。言うまでもなく、どれほど優れたQBでも相手ディフェンス選手のラッシュに遭えば、パスの正確さを欠くからだ。ただし、IBMはRB陣が粒ぞろいだ。クラフトのパスゲームばかりに気を取られればグラウンドゲームでやられてしまうだろう。
東京ガスはランオフェンスで少しでも距離と時間を稼ぎたい。つまり、ランで確実にじわじわとボールを進めながら時計を進めることで、IBMからオフェンスの時間を少しでも奪うことが効果的となるであろうからだ。東京ガスには安定感のあるRB古川と小柄ながらやはり走力が売りのQB室田がいる。この2人によるランゲームは、同軍オフェンスの見どころであり、かつ生命線だ。
東京ガスは今季初戦の対オール三菱戦で、試合時間残り4秒から逆転のTDを挙げ今季初勝利を飾っており、土壇場での勝負強さを持っている。IBMは強敵だが、最終的には少しでも本場アメリカのQBを困惑させることができるかどうかがこの試合の最大の注目点ではないだろうか。(永塚和志)