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’12.09.22

皆さん、こんにちは。
先週末はIBMの第2戦でした。私は試合を観る事が出来なかったのですが、第1戦は80%を越えたクラフト選手の成功率は57%と低下。大観衆での試合に慣れている名門校出身だけに、スタンドの無い川崎球場では乗り切れなかったのか?
それでも5つのタッチダウンパスを成功させるとは流石です。次はいよいよディフェンディングチャンピオン・オービックとの対戦。いい状態に仕上げて臨んでほしいですね。

さて、そろそろ後編に入りたいと思います。

第1Q、たちまち2本のタッチダウンを奪ったクラフト選手率いるIBMオフェンスに、観客の皆さんは「今日は一体何点入るんだろう…」と思われたのではないでしょうか? しかしこの後、IBMが奪った追加点はフィールドゴール2本による6点に留まりました。
開幕戦らしい(?)、ミスによる自滅が少なからずあったことも確かですが、第2Q以降の富士通ディフェンスのアジャスト(対応)もお見事でした。

プレー開始直前の駆け引き

まず、この試合で初めてIBMが得点出来なった第2Q最初の攻撃シリーズの3rdダウンの両チームの駆け引きを見てみましょう。



この試合、IBMオフェンスはハドル(プレー前の円陣)を組まず、スクリメージライン上で、相手の守備隊形を見てから、その隊形に有効なプレーをクラフト選手が選択する、という作戦をとっていました。

画面手前、富士通#31斉藤選手がスルスルとスクリメージライン方向に近づき、ブリッツ(*)をするような動きを見せました
 ↓
これに対し、#3クラフト選手がオーディブル(作戦変更)のコールをかけています
富士通がブリッツを仕掛けて「マンツーマン・ディフェンス」を引いてくることを予測したオーディブルだったと思われます
 ↓
それに対し、今度は富士通のディフェンスの選手が、手を横に交差するような動きをしています
これはクラフト選手が「マンツーマン・ディフェンス」に対するオーディブルをかけた事を見越して、ブリッツをキャンセルし、「ゾーン・ディフェンス」に変更する為の合図と思われます
(あくまで推測ではありますが・・・)

結果、ブリッツに伴って「マンツーマン」になると予測してクラフト選手が選択した(と思われる)パスコースは、「ゾーン」で守った富士通ディフェンスの網にかかり、パスは成功するものの、ファーストダウンを奪えませんでした。
そして、続く第4ダウンにギャンブルを試みるも失敗。この試合初めて得点を奪えずに攻撃を終えました。

この直後の攻撃シリーズで富士通はこの試合初のタッチダウンを奪い3点差に追い上げます。しかし、IBMもフィールドゴールで3点を追加して突き放し、接戦が続きます。


*ブリッツ- ラインメン以外のディフェンス選手が、攻撃側バックフィールドに突進するディフェンス戦術(ウイキペディアより)


早いテンポへの対応

そして迎えた第2Q残り1分29秒・敵陣45ヤード地点からのIBMオフェンス。ここで追加点を奪って、2タッチダウンのリードで前半を終える事が出来れば、後半の戦いを優位に進める事ができる、まさにクラフト選手の「腕の見せ所」という場面での最初のプレーでした。



この試合で富士通ディフェンスが終始、いいように決められ続けていた、フィールドの端を守るCB(コーナーバック)の手前のスペースへの早いタイミングのパスを#34樋田選手が狙い澄ましたようにインターセプト!



序盤は未体験の早いタイミングで投げられるパスに対応できていなかった富士通ディフェンスでしたが、このプレーでは、プレー開始と同時に、#34樋田選手が一目散にCB#21今井選手の手前のスペースに向かって広がっていったのが分かっていただけると思います。


おそらく、クラフト選手にしてみれば、#21今井選手がスルスルと下がったのを見て、「はい、またいただきー!」という位の感覚で投げたパスだったのではないかと思います。


このように、序盤はクラフト選手の早いテンポのパスに振り回された感の強かった富士通ディフェンスがこの辺りから対応してきました。


「ディスガイズ」で早いタイミングのパスを阻止

また、後半に入ると、富士通ディフェンスは、守備隊形の「ディスガイズ(変装)」を多用しました。これは先述の通り、「手の守備隊形を見て、その隊形に有効なプレーをクラフト選手が選択する」事への対策のひとつ。

 



プレーが始まる前の守備隊形では、フィールド両端のCBの前のスペースが広く空いています。

これを見た#3クラフト選手は、画面手前側のCB・#21今井選手の手前のスペースで#17小川選手を狙うパスパターンを選択した、と思われます。

しかし、プレーが始まると同時に、CB#21今井選手が後ろに下がらず、スルスルと前に上がってきてしまった為、#3クラフト選手はパスを投げる事が出来ず、スクランブル(緊急発進)



 

このプレーは結果的にスクランブルで6ヤードのゲインを 奪ったのですが、その後も富士通ディフェンスの「ディスガイズ」により、序盤は物凄く早かったクラフト選手のボールを投げるまでの時間がしばしば長くなってきます。

結果、序盤はほとんどクラフト選手に触ることすら出来なかった富士通のディフェンスライン陣は、後半は2回のQBサックを奪うなど、プレッシャーをかけることに成功しました。


試合後、クラフト選手はボールを持ちすぎた事を反省していましたが、これは富士通ディフェンスの「アジャスト力」がクラフト選手を追い込んだ結果とも言えるでしょう。

試合前は「(データが無いので)準備のしようが無い」と話していた富士通・藤田ヘッドコーチでしたが、試合中にキッチリと修正。日本のトップチームのしたたかさをしっかりと証明してくれました


それでも、敗れたとは言え、昨シーズンまでは明らかに「格上」であった富士通に対して、実に49回のパスを成功させ、439ヤード(!)を獲得したIBMクラフト選手のパフォーマンスは圧巻でした。日本のファンにもかなり大きな衝撃を与えたのではないでしょうか

 

来る第3節、鉄壁のディフェンスを誇る王者・オービックとの対戦も非常に楽しみです。このセントラルディビジョン・中盤戦のベストマッチは9月30日。スタンド改修工事のため、フィールドレベルで臨場感たっぷりの観戦が楽しめる川崎球場で13:30キックオフです!

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